銀の魅力と、銀製品のお手入れについて


人類は古くから経験的に、銀にバクテリアの繁殖を押さえ殺菌力があることを知り、食器や医療器具に使用し、また魔除けとして身に着けてきました。喉と頚動脈の急所を守るために首輪として、耳や鼻の孔から悪霊や病魔が侵入するのを防ぐためにピアスとして、手首にも腕輪として…。また古代や中世、銀の皿や盃は変色して異常を知らせ、幾度となく要人の毒殺を未然に防いだとも言われます。晩餐会で銀食器を使うのは、大切なお客様に毒など盛るつもりはありません、安心してお召し上がりくださいという意図の表明でもあったのです。

スターリングシルバー(シルバー925とも言う)の歴史は古く中世ヨーロッパに遡り、12世紀に英国で装飾品や銀貨(スターリングコイン)の標準品位として認定された銀素材です。銀92.5%に、銅と、わずかなアルミニウムなどを混ぜた銀銅合金で、装飾品や銀貨に最も適した硬さを出したものです。一生どころか代々の財産としてお持ちいただけますが、プラチナのように放っておいてよいというものではありません。銀は空気に触れて化学変化を起こしやすい金属です。欧米では、年に一度クリスマス前に、家じゅうの銀食器や銀製品を磨くのが、伝統的な家庭行事になっているそうです。

銀が黒ずむのは、化学用語で言うと酸化(サビ)ではなく硫化だそうです。空気中の硫化水素や水分中の二酸化硫黄と反応して、表面に硫化銀が生じるのです。特に日本は火山国のためか、全く同じに作られた銀製品でも、ヨーロッパよりも早く黒ずんでしまいます。ただ、銀の硫化の場合、鉄の酸化のように中までボロボロになってしまうことはありませんから、たとえ何百年も放っておかれて、どんなに真っ黒に変色してしまった銀でも、正しく手入れすれば元の輝きを取り戻すことができるのだそうです。


銀の黒ずみを予防するには


銀のアクセサリーを身に着けたまま、硫黄泉の温泉に入ると、たちどころに黒紫色に変色しますので、必ず外して、温泉水や湯気に当たらないように保管してください。また、輪ゴムには硫黄分が多く含まれていますので、アクセサリーや銀食器などを輪ゴムで束ねることは、絶対になさらないでください。ポリ袋やラップで包んだ上から輪ゴムで束ねることもダメです。ポリエチレンは硫黄分を透過させてしまいます。ですが万一失敗し変色させてしまっても、少し投資して適切なメンテナンス用品を購入し、正しく手入れすれば、元に戻すことが可能です。

曇りや黒ずみが気になり始めたら、サビ落としではなく、「銀磨き」として市販されている薬剤を使用して磨いてください。液体状、ペースト状、ダスターまたはクロス(布に薬品が染み込ませてあるもの)などがあり、デパートや宝飾店で「銀磨き」とお尋ねくだされば、簡単に購入できます。また、懇意にしている宝飾店におついでの折に持参されれば、サービスで手入れしてくれるかもしれません。

ボウディッカでは、株式会社中田貿易が輸入するアンクルビルという専門メーカーの銀磨きを使用していますが、他にも日本製や他国製の銀磨きが出回っています。普段の予防的なお手入れには、「アンクルビル・シルバークロス」や「アンクルビル・ジュエリークロス」で十分でしょう。(「アンクルビル・ジュエリークロス」は金銀プラチナにも使用できます。)シルバークロスやジュエリークロスは洗濯すると薬効が消えますので、使い古して真っ黒になりましたら、新しくお買い求めください。アンクルビルのシルバークロス、ジュエリークロスは、シルバープレイト(銀めっき製品)やつや消し、マット仕上げのアクセサリーにも安心してご使用いただけます。「万能金属磨き」とうたった製品が売っていたり、雑誌などには「歯みがきでも磨ける」と書いてあったりしますが、それらは研磨剤効果が強すぎ、表面に細かな傷をつけて曇らせてしまったり、つや消し・マット仕上げの場合はマット処理を削り落としてしまう危険があります。また、宝石や真珠などの付いたアクセサリーは、メンテナンス用品の選択に特別の配慮が必要です。石付きのアクセサリーには、専門知識のある宝飾店スタッフに、正しいメンテナンス用品を選んでもらってください。

当店では、通販ショップでシルバージュエリーお買い上げのお客様に試供品として「アンクルビル・シルバークロス・ミニ」を1枚ずつお送りしますが、銀磨き用品の販売はおこなっておりません。


銀が黒ずんでしまったら


上述の「アンクルビル・シルバークロス・ミニ」などで擦れば、彫刻や透かし彫りの中まで黒ずみを取り除くのは難しいのですが、表面の輝きはかなり取り戻せるうえ、銀本来の味わいが加わりますので、ぜひお試しください。

新品同様に蘇らせる方法もあります。デパートや宝飾店、東急ハンズ等で「アンクルビル・シルバークリーンキット」または「アンクルビル・シルバークリーンミニ」という商品をお買い求めください。これは表面の硫化銀膜を除去する液体状の化学薬品で、黒ずみの出た銀製アクセサリーを木綿糸などで吊り下げて容器の液体に沈めて5~10秒(化学反応で硫黄のような臭いがしてきます)で引き上げ、水道水で洗って水気をよく拭き取り、あとはつやが出るまでシルバークロスかジュエリークロスで磨くのです。硫化銀の黒ずみは消えてまるで魔法のように元通りになります。酸化や複合的な化学変化による変色は完全に元通りにならないかも知れませんが、一度お試しください。シルバークリーンは箱の中の説明書をよくお読みになり、正しくご使用ください。シルバークリーンは銀製品(スターリングシルバーおよび銀めっき)専用で、石付きのものや金製品には使用できません。石付きのものや金製品には「アンクルビル・ジュエルクリーンキット」または「アンクルビル・ジュエルクリーンミニ」という別の製品をお使いください。

ある日本人のお客様に「20年前にアイルランドで買って来てから、この指にはめっぱなし」という銀のクラダーリングを見せていただいたことがありますが、落ち着きのある輝きに驚かされました。銀のアクセサリーはずっと身に着けていれば、いやな変色が不思議と生じないもののようです。衣服等との摩擦で日常的に磨かれるからかもしれません。それでもご使用後は、汗や汚れなどを布で拭き取ってください。常時お肌に直接触れている面に、境界のはっきりした染みが出ることがありますが、これは「めっきが剥げた」のではなく、やはり変色なのです。汗などの成分が作用して、硫化だけではない複合的な化学変化を起こしている可能性があります。

これは個人のお好み次第ですが、銀製品は、新品同様の輝きよりも、むしろ歳月を経たアンティークのような風合いもまた、お楽しみのひとつではないでしょうか。


宝石箱にご用心


宝石箱(ジュエリーボックス、ジュエリーケース)は貴金属の保管専用なのだから、また、メーカーオリジナルの箱なのだから…と油断していると、久しぶりに開けてみたら、銀製品は真っ黒、ゴールドも赤焼け…という事態が起きないとは限りません。箱の内貼りの接着に使用されたゴム系ボンド(多くの場合は黄色い)が硫化ガスを発生し、銀の黒ずみの原因になっている可能性があります。宝石箱の中の銀の黒ずみが早いと感じたら、宝石箱自体を疑ってみてください。


いぶし銀のお手入れ


いぶし銀仕上げとは、デザインに凹凸のある銀のアクセサリー等で、凹んだ部分が黒く、より立体的な視角効果のあるもののことです。製作過程で硫化反応させて全体をわざと黒く変色させ、その後、出っぱった部分をバフや銀磨き布で研磨して光沢を出し、凹んだ部分は黒いまま残しておくのです。出っぱった部分の研磨の度合いを控え、全体的にわざと鈍い光り具合にしたものを「古美加工」とも言います。いぶし銀は、シルバークロスやジュエリークロスで出っぱった部分だけ磨き、凹んだ部分の黒ずみを落とさないように注意してください。クロスを手に持って磨くと、手加減したつもりでも意外と深くまで磨けてしまうので、テーブルなどの平らな面にクロスを広げて置き、アクセサリーの方を手に持って擦りつけるようにすると、凹んだ部分は磨かれずに残ります。いぶし銀や古美加工のものは、液体状の薬品を使用しないでください。クロスでの磨き過ぎも禁物で、お好みの風合いで止めておきましょう。


いぶし銀の再生


いぶしが取れてしまった時は、市販のいぶし液を使っていぶしを付け直すこともできます。「銀黒」という製品がありますので、具体的な情報はエダミネのウェブサイト http://www.edamine.com をご覧ください。


より詳しい情報


銀製品のお手入れについて、より詳しく知りたい方には、アンクルビル(株式会社中田貿易)のウェブサイト http://unclebill-nakata.com をおすすめします。製品の紹介の他、「Q&A」のページには金銀製品その他のお手入れについての情報があります。


一般的なご注意


銀のアクセサリーを長時間ご使用になると、皮膚や衣服に黒い汚れが付くことがあります。ボリュームのある銀製(スターリングシルバーおよび銀めっき)のネックレス、ペンダント、ブローチ等は、なるべく黒っぽい衣服でご使用になることをお勧めいたします。

【アルパカシルバー(=洋白・洋銀)】
アルパカシルバーとは、銅・亜鉛・ニッケルの合金で、シルバーカラーの輝きを持ちますが銀は含まれていません。ハガティやアンクルビルなどの銀磨き用品ではお手入れしないでください。

一般に金属アレルギーが起きやすいのはニッケルだと言われていますが、人によってアレルギーの原因となり得る金属は、ニッケルだけではありません。日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会は診療ガイドラインの中で、アレルギー性接触皮膚炎の代表的な原因物質のひとつとして3種の金属(ニッケル、コバルト、クロム)を挙げていますが、金や銀も原因物質となりうる対象外ではありません。皮膚に万一、金属によると思われるかゆみやかぶれが発生しましたら、直ちにジュエリーやピアス、腕時計、ベルトのバックル、金属製アクセサリー類のご使用をやめて、医師の診察を受けてください。どの金属にアレルギー反応を起すか突き止めることができれば、それを含まない素材を選んでジュエリーやアクセサリーを再びお楽しみいただけます。


【アンクルビル製品をお求めの際は・・・?】
当店ボウディッカは、ケルティックテイストという特徴を備えたシルバージュエリーを、アイルランドやフランスから直輸入してご紹介する専門サイトであって、金銀のメンテナンスの専門店ではありませんので、これらの販売はおこなっておりません。アンクルビル製品をはじめ、金銀のメンテナンス用品は、たとえば東急ハンズなどで各種販売しています。東急ハンズのようなDIY店や、デパートの宝飾売り場などでお尋ねくださるよう、よろしくお願いいたします。








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